赤茶色の泥で車をスタックさせる
化石の森公園を発ち、グランドサークルの北の方へ向かった。
Four Corners というアリゾナ、ニューメキシコ、ユタ、コロラドの4州の州境となっているモニュメントに向かって、車を走らせることにした。
旅にトラブルはつきもの、とはよく言うが、今回は車をスタックさせた話だ。
グランドサークルの 3時方向、東側にある町 Chinle へ車を走らせた。
シカゴまで続く Route 66 の途中で左に曲がり、高速道路でない道路を走ることになった。
高速道路ではないが、
何もない一本道が続く道路である。
ときどき車を停めて、景色を眺めた。
この辺はあまり車が走っていないので、
こんなことや、
こんなことができる。
さて、何もない一本道を走り続けるとやがて雪が積もる地域に入った。
もう少し走らせると、Chinle という小さな町に着く。
この町にもいくつかモーテルがあるらしく、宿泊の候補地にしていた場所だった。
ここでガソリンを入れることにした。
この辺の車のほとんどは、撥ねた赤茶色の泥を車体につけている。
周辺を走っていても分かるのだが、この辺では放牧をしている農家が多いらしく、未舗装の赤茶色の泥道を走っている車も多く見かけた。
ここのガソリンスタンドに駐車している車の比でなく、車体の下半分のほとんどが赤茶色になっていた。
こんな大きくない町にも RedBull のトラックが走っていたりするので、さすがだと思った。
さて、再び車を走らせる。
この辺にくると、赤茶色のメサ(一枚岩)が見え始めた。
土の赤茶色と雪の白が対照的だ。
この辺をスクールバスが走っていることにも驚いた。
スクールバスから生徒が乗り降りするとき、対向車線の車を含めて停止しなければならないというルールがあるため、しばらく後ろをついていくことになった。
一度生徒が降りて家に歩いていくのを見たのだが、道路から家まで200mほどもあり、雪道を一人で帰って行っているのを見た。
こんなだだっ広いところにも住居があり、町があり、学校があることが本当にすごいと思った。
さて、景色がきれいなので少し坂道を登ったところで一度車を停めて休憩することにした。
ずっと荒野だった景色はすっかり変わり、メサと雪が広がる世界に来た。
この辺の土はとてもぬかるんでいるところがあり、そこに踏み入れると漏れなく足が取られた。
この足跡からも、どれくらいぬかるんでいるかがわかると思う。
スニーカーも真っ赤になった。
さて、ぬかるみが原因でそれ以上に悪いことが起こった。
車が “スタック” してしまったのだ。
右側の後輪がぬかるみにはまってしまい、エンジンをかけて車を走らせようとしてもウンとも動かなくなってしまった。
ぬかるみで後輪が空回りしてしまうからだ。
荒木がアクセルを踏みながら、ぼくが後ろから車を押してもうんともすんとも動かない。
日本の JAF に当たる AAA を呼んで動かしてもらうしかないか…
そう考えていた時に、ある解決案を思いついた。
ここは坂道だ。
勾配下方向に動かすのであれば、より少ない力で車を動かすことができる。
車に後ろ向きの力を与えることで初速度を与え、その勢いで道路に出る作戦だ。
車が走ってきていないことを確認、バックギアに変え、ハンドルを左に切り、アクセルを踏んだ。
かくしてこの作戦はうまくいった。
火事場の馬鹿力というが、困った時には割と頭も動いてくれるものだ。
呼吸を整え直し、また車を走らせた。
きれいな景色をゆっくり眺めたくなった時はスタックに気をつけながら…。